『ヨーロッパ・コンサート2004 フロム・アテネ』
● ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
● ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 Op.25(シェーンベルク編曲管弦楽版)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・サイモン・ラトル(指揮)
収録:2004年5月1日 ヘロデス・アッティコス奏楽堂、アテネ(ライヴ)
● 特典映像:メイキング(字幕:英独仏)
ラトルの指揮。アテネのヘロデス・アッティコス奏楽堂で、バレンボイムをソリストに迎えてのブラームス・コンサート。
1曲目はピアノ協奏曲第1番。ラトル&ベルリン・フィルは、この公演に先立つ2003年12月にツィマーマンの独奏で同曲をセッション録音、鮮烈な演奏が大反響を呼びましたが、ここではまったく資質の異なるピアニストの濃厚な歌い口に対して、完全に対応する柔軟さをみせています。
もちろん、かたやスタジオでのセッション、かたや野外劇場での実況とシチュエーションは大幅に異なり、会場の制約もあってか、ここでは第一、第二ヴァイオリンを左手に並べた通常配置を採っていますが(ツィマーマン盤では第二ヴァイオリンを右手に配した両翼型配置)、強大なパワーとデリケートな細部表現とが共存した見事な演奏は変わりません、低弦の圧倒的な威力、とどろき渡るティンパニの力強さ、第3楽章における胸のすくような機動力の目覚しさ、木管群を中心として味わい深い独奏もあれば、要所要所であふれるような旋律表現の鮮やかさも聴かせてくれるという、ほとんどパーフェクトといいたいその演奏は、ライヴであることを考えれば音質の良さも含めて驚異的です。
一方のバレンボイムは味わい濃いロマンティシズムで勝負。第1楽章のピアノの入り方にしても、細かくテンポをゆらしながら霧の中から徐々にあらわれてくるかのようなイメージを喚起させるあたりはさすがです。かつてのバルビローリ、メータとの録音、チェリビダッケとの映像作品でも一貫してロマンティックなアプローチを採ってきたバレンボイムですが、濃厚かつ重厚なピアニズムは堅持されている模様。往年の巨匠ピアニストを思わせる語り口の豊かさが印象的です。
ちなみに、ツィマーマン盤とこの演奏の演奏時間は以下のようになっています。
Ⅰ:23:33 Ⅱ:14:57 Ⅲ:14:54 Total:53:24(バレンボイム)
Ⅰ:23:16 Ⅱ:15:38 Ⅲ:12:04 Total:50:58(ツィマーマン)
後半のプログラムは、シェーンベルクが管弦楽用に編曲したピアノ四重奏曲第1番。これは昔からのラトルが得意とするレパートリーだけに、今回の演奏も素晴らしい仕上がりです。かつてのバーミンガム市響との録音を大きく上回る劇的な表現は、この作品の紹介に情熱を燃やしてきたラトルならではの見事なものです。