人気機種の本機も私のお気に入りのアナログレコードプレーヤーのQL-7Rのグレードアップ版後継機です。
今回の本機は保管状態が良くなかったようで木部の劣化が酷くそこがちょっと残念です。
できるだけ補修して目立たないようにしました。問題はありますがクリーニングしてかなり綺麗になりました。
もちろん動作は良好で問題はありません。
今回は即決で購入された方に本機より少し前のカートリッジ実力機MD-1016とビクターサービスによる豚革ターンテーブルシートをお付けします。
MD-1016は同じで針を変えることで上級クラスにも対応していました。そのため針には多くのバリエーションがありました。
付属の針は使いやすい高出力タイプでジャズやポップスなどに対応するDT-33H(黄色ノブ)です。
針自体は特に問題ないと思いますが使用時間はわかりません。現状迫力あるとても良い再生音が出ています。
MD-1016はZ-1系同様人気が高くこのカートリッジを最高とされるマニアの方も居られるほどです。
4MD-1XはMD-1016にシバタ針4DT-1Xをセットしたプレミアム版で当時の最高機種でした。
本機の付属品MD-1020の前機種で後のZ-1シリーズなどと同様グランツ(ミタチ音響)製のOEMです。
シェルは純正のアルミインパクトプレス製のPH-4でちょっと珍しいブラックタイプです。
さらにお付けするビクター豚革ターンテーブルシートの詳細はわかりませんが前記タイプKS-1と後期タイプKS-2があったようです。
定価は3500円だったようですが現在でももっと高額で取引されているようです。
この方はとても詳しいようです。古い製品ですが色褪せなどがあっても品質はほとんど変わらないようです。
付属のゴムシートの上に載せて使用するのが一般的のようですがガラスシートなどの硬質系シートとの併用もお勧めです。
JP-501のように安定して保持できるシートには不要かもしれませんが一般的なゴムシートではさらに安定するようです。
静電気の発生も抑えられます。
私は故長岡鉄男氏のファンですが、QL-7Rは長岡氏が特に高く評価し
別冊FM fanの読者訪問で読者宅に持ち込んでテストしたりなど盛んに取り上げていた事をよく覚えています。
とても古い機種なので長岡氏のレビューは見つかりませんが当時の友人もそのレビューを参考に購入していました。
当時私はやはり長岡氏が高く評価していたYAMAHAのYP-D7を使っていました。
その後、VictorのTT-81ターンテーブルを使って長岡式の積層合板プレーヤーシステムを作り今でも使っています。
TT-81といえば本機に使われているTT-71の上級機になりますが購入してモーターを見てみると
YP-D7と全く同じモーターを使っていた事にちょっと驚きました。
当時、ビクターは自社機はもとよりヤマハやマイクロなど各社にモーターを供給していました。
ヤマハのあのGTシリーズもビクター製との事です。
一時ヤマハもマイクロもDD第一人者のTechnics/松下製のモーターを使い、ビクターも松下製のモーターを使っていましたが
自社で高性能のモーターを開発後は瞬く間に各社に広まったようです。
もちろん本機に採用されたモーターも同じ物でその後もビクターのプレーヤーには採用され続けました。
実はTT-81のプレーヤーを作ってからも同じモーターを使ったTT-71はずっと気になる存在でした。
TT-81はピッチコントロールと±両方向制御があるとはいえ同じモーターなので基本性能は同様といえます。
しかしプラッターはストロボの構造のため外側が薄く対してTT-71は当時の一般的なターンテーブル同様イナーシャを重視した外側が厚い構造。
ここがずっと引っかかっていました。
数年前にQL-7Rを入手して高いC/Pの非常にバランスのとれた高性能で音の良い機種と納得したものです。
本機はそのQL-7Rのキャビネットをさらに強化、重量増、仕上げの高級化、アームベースの強化
アームのオートリフトアップ、ターンテーブルのオートストップなど細部にわたって改良して完成度を高めた後継機になります。
そのため少し高額にはなり、また故長岡氏の評価はわかりませんが間違いなく推奨されておられた事でしょう。
機能的には音質を損なわない最小限のオート機構をプラスしてより使いやすくした上に音にプラスするキャビやアームベースの強化が図られました。
なお、本機に搭載されているトーンアームは単売品のUA-5045の同等品と思われる方が居られますが、ちょっと違いますね。
ビクター製のプレーヤーでUA-5045にいちばん近い物が搭載されているのはJL-B61Rなのですが、これも5045の簡易版になります。
本機のアームはさらに簡素化されているようです。それでも基本性能や音などはほぼ同等ベース部もしっかりしたダイキャストで強化されています。
また、UA-5045の上級機のUA-7045といえば長岡氏が
『このアームは値付けを間違えたために売れなかった、倍の価格をつけていたらもっと売れただろう』と仰ったものです。
そのため販売中はあまり売れなかったのに販売終了後に価格が上がったりして今でも人気機種です。
実は7045の簡易版の5045の方が高価で複雑なヘリコイド式の高さ調整機構が無い分しっかりとキャビネットに固定され音には有利なようです。
QL-7Rっは以前のJL-B44などと比べるとキャビネットは積層合板仕上げから一般的なパーティクルボードに
化粧シートを貼り付けた物になってしまいましたが、本機ではとても綺麗な鏡面仕上げの化粧板で仕上げてあります。ここも人気のポイントでしょう。
本機の型番からはRが無くなりましたが同様のローズウッド(紫檀)仕上げでQL-7Rよりさらに贅沢に仕上げられたビクターのプレーヤーの顔といえる物です。
本機も複数台入手した物の1台をクリーニング、メンテナンスしたものです。
軸受けは古い油をふき取り、新たに超潤滑性の特別なオイルを注油しました。
本機のDCサーボモーターはFG基板があって簡単にはローターは外せないのですがこの部分もいちど外してチェックし注油しています。
全体を特殊なクリーニングワックスなどでクリーニングしました。
残念なのはキャビネットに劣化があり、木部の目立つ傷や劣化膨らみや接合部の開きがある事です。
できるだけ目立たないよう補修と劣化した木部は接着剤と着色を施しました。
多少難はあっても素晴らしい基本性能、機能、音には全く問題ありません。
本体キャビネットのパーティクルボードは経年劣化で崩れやすくなります。底部木口は特に劣化しやすいので接着硬化させこの後は劣化しないと思います。
また、アームリフターレバー部の木部も若干膨らんで小パネルに浮きがありますがあまり目立たないかと思います。
金属部はプラッターやアームなどコンパウンドや金属磨きクロスで磨きピカピカです。
ダストカバーもコンパウンドで磨き特殊なクリーニングワックスで仕上げてクリアーになりました。
取りきれない細かなキズなどはありますがかなり概ね美品と呼べるレベルかと思います。
本機などのアームUA-7045シリーズで問題になるウエイト部の下がりはゴム部を補修、調整してほとんど目立たなくなりました。
アームはいちど取り外して丁寧に磨き、軸部もクリーニングして感度良好です。
アームの軸部は古くなるとヤニなどが付着して感度が低下します。ここをクリーニングすると驚くほど感度は蘇ります。
使いやすいダイヤル式インサイドフォースキャンセラーも問題ありません。
劣化しやすい脚部のゴムは軽く補修してあります。1個底の部品が無くなっているのは樹脂で補修。見た目も機能も問題ないと思います。
その他、年式なりの細かいキズ、スレなどがありますが木部劣化、歪み以外は全体的に綺麗かと思います。
添付画像をよくご覧になってご検討ください。写真は下手で申し訳ありませんが多めにupしておきました。
ヤフオクの仕様上傷や汚れありとなっていますがクリーニング済みなので汚れはほとんどありません。
その他、回転も安定してストロボスコープも33回転、45回転も問題なく止まります。ブレーキも問題ありません。
サービスマニュアルに従ってオシロスコープを使って調整。クォーツロックで回転はとても安定しています。
付属品はゴムシートとEPアダプター、取扱説明書のコピーになります。
さらに即決で購入された方には上述のカートリッジMD-1016とビクター特製豚革シートをお付けします。
即決価格は少し高額にはなりますが絶対に損はさせません。私のお気に入りの組み合わせになります。
オートストップ機能の付いたマニュアル式ですので慣れた方なら問題ないと思いますが
はじめてレコードプレーヤーをお使いになる方はアームのバランスのとり方や針圧の掛け方
アームの高さの合わせ方、カートリッジの取り付け方など一般的なプレーヤーの使い方をよくお調べになってからお使いください。
よくプレーヤーで問題になるのはカートリッジの取り付けによる接触不良とアームの高さ調整ですね。
アームやアームリフターの高さによっては始めは良くても終わりの方までかけられない事などあります。
カートリッジの厚みはそれぞれ微妙に違いますのでよくチェックしてください。
ビクターはもともと
日本ビクター蓄音器といったくらいでレコードプレーヤーの専門会社だったのです。
この機種の前にはJL-B77には自社開発の最高レベル(現在でもこれを超えるのはあるのか?)のモーターを開発したり
この後一時期ACモーター(JL-B61/TT-61など)を開発採用したり、本機などに使われたDCモーターを開発採用し
その後のメインモーターとして自社機はもちろんヤマハやマイクロなどにOEM供給する事になります。
本機以前には松下製のモーターを搭載した機種もありました。
この松下製のモーターはTechnics機はもちろんヤマハやマイクロなど各社が採用しました。
松下を手本によく研究して
短期間に試行錯誤の末、各社に多数供給できるモーターを開発したのだと思います。
短期間にこれだけ多数種のモーター採用の機種があるのはプレーヤー専門会社としての意地があったんでしょう。
この機種はクォーツロックですので回転は非常に安定しています。ここは安心ですね。
レコードプレーヤーは本機のようにしっかりと重く丁寧に作られていれば、まず良い音がします。
その中ではアームがいちばん音に影響するかもしれません。
本機のアームは単売品UA-5045をプレーヤーシステム向けにリファイン簡素化した同等性能品です。
完成度が高く、音の良い、機能的でとても美しいアームと思います。
プレーヤーではマニュアル機よりオート機の方が人気が高いようです。しかし少しでも音に拘るなら断然マニュアル機です。
オート機ではかけるコストをその機構にさかれてしまい肝心の音はどうしても疎かにされてしまいます。
複雑化したオート機構は新しいうちは良いのですが古くなるとどうしても故障のリスクが増大します。
でも寝落ちは心配ですね。そこで本機のようなオートリフトアップ、ストップ機能付きのマニュアル機ですね。
本機当時音に拘った高級機はほとんどこの形に落ち着いていました。
この機種は音に拘り続けたビクターが作り上げた素晴らしい銘機といえるでしょう。
レコードプレーヤーはオーディオ製品の中では特に繊細でその取り扱いには熟練が必要かと思います。
私は今でもレコードを聴くことがメインで多くのプレーヤーを使用してきました。
やはりオーディオマニアでしたらレコードを聴きましょう。
メカ部分がほとんどのアナログレコードプレーヤーはオーディオ機器の中では本当に特別な物と思います。
リサイクル業者の方などご自身で全くプレーヤーを扱う事のないオーディオとは無関係な方が梱包を行うとプラッター
ゴムシート、アームなどをロクに固定もせず送られてしまい本当に呆れる事が多いです。
いくら細かく説明してもわからないのですね。
この点私は趣味でプレーヤーを扱って来ましたので梱包、発送に関しては安心してください。
たとえばコード、ケーブル類をほとんどの方はジャバラに折って束ねますね。
これは輪っかにしましょう。メーカーの出荷時にそうしてしまうのをマネするのでしょう。
新品なら良くてもケーブル類は経年で硬くなります。音響のプロは必ず輪っかにしますね。
プラッター、ゴムシート、カウンターウェイトなどは取り外して同梱します。
アームはテープなどで固定して緩衝材も使います。
ただし、段ボール箱や緩衝材はリサイクルを使いますのでご了承ください。