また9月にはミュンヘンで交響曲第8番『千人の交響曲』(この作品はアルマに捧げられています)の初演を指揮し、
作曲家マーラーとして空前絶後の大成功を収めますが、これが最後の自作の初演となりました。
こうした時期に作曲が進められた第10番は、それまでの作品以上にマーラーの個人的な生活の影響が色濃く反映されているようで、
特にアルマへの愛と苦悩が交錯した複雑な感情が大きな影を落としているのではないかと考えられています。
1911年5月18日にマーラーはこの世を去り、第10番は未完成のまま残されました。
その後多くの作曲家や研究者たちの手によって紆余曲折を経ながら、この作品の補筆完成の試みが続けられ現在に至っているわけですが、
ブーレーズは一貫して、完成された第1楽章のみ演奏するという立場をとっています。
歌曲集『不思議な子供の角笛』は、通常、1899年に出版された12曲のことを指し、アルバムとして録音する場合には、
これに詩集『子供の不思議な角笛』をテキストとする『若き日の歌』の中の9つの歌曲、および交響曲の3つの楽章という12曲の中から選ばれて組み合わされるケースもありますが、
ここでは、オリジナル通りの12曲を収録しています。
メゾ・ソプラノのマグダレーナ・コジェナーは、古楽を中心に近代作品までとりあげており、実演ではマーラーの『リュッケルト歌曲集』や『角笛』に加え、交響曲第2番『復活』なども歌っています。
メゾ・ソプラノの落ち着いたトーンと、コジェナーならではの表現力豊かな歌唱が見事です。
深く柔らかい美声とコントロールの効いた緻密な歌唱に定評のあるバリトン、クリスティアン・ゲルハーヘルは1969年ドイツの生まれ。
歌曲の分野では偉大な成功を収めたゲルハーヘルには、すでにマーラーの録音が3種類あります。
中でも注目されるのは、ケント・ナガノとの『大地の歌』で、意味深い歌唱が素晴らしい聴きものとなっていました。
なお、彼は2009年に『角笛』の中の4曲をピアノ伴奏で録音していましたが、今回はそれらはすべてコジェナーが歌っているため、どれも初めての録音となります。